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「この冬一番の寒さ」。
今朝のラジオではそんなことを言っていた。
窓の外を見ればそこは、一面の銀世界。冬は寒いけれども乾燥しているこのあたりでは、積もるほどに雪が降ることは珍しい。

胸がわくわくしてくるのがわかる。昨夜、店のお姉さんに「酒ぐらい、飲めますよ」と悪態ついて飲み干したワインで頭がずきずきしているが、そんな痛みを吹き飛ばす勢いで服を着替えて、家を出た。

「ロイ坊!どこへ行くんだい」
「ちょっとそのあたり、まわってくるよ」
「まったく、犬っころみたいなこと言ってさ」
義母は呆れ顔で寝室へ戻っていった。

実際、どこか行きたい場所があるわけではなかった。
ぎゅうぎゅうと音がする真新しい雪を踏む、その感触を愉しみたくて、ロイはなんとなく町のはずれへと歩いていった。
そして、そう遠くない場所に、錬金術の師匠の家があることに気がついた。
そこには、なんだかいつも寂しそうな顔をしている娘がいる。

「雪合戦でもするかな」

術を教わる日でもないのに、ロイは師匠の家へ向かった。




その世界ではすぐれた理論とともに偏屈者としても知られるロイの師匠、ホークアイの家の周りには足跡ひとつもなく、誰の出入りもなかったことが見て取れた。

「リザは雪遊びしないのか…」

11歳になる師匠の娘のことを思い浮かべた。確かに、あまり活発なほうでもない。
それなら、と、ロイは考えて、雪だるまを作ったらどうかと思いついた。たくさんの雪だるまで家を囲んだら、びっくりするだろう。
普段あまり表情を変えないリザの驚く顔を見てみたくなった。

「それに…」

つい最近師匠のところで読んだ本の錬成陣をアレンジしたら、雪だるまくらいなら作れそうだ。
雪は、小さな氷、すなわち水の結晶でできている。物質としての組成を変えることなく、そのまま錬成エネルギーで一箇所に集めて球にし、それを二つ重ねてやればいい。
もうここまでは独習しましたと、師匠に実物で報告するのもいいかもしれないと、ロイの心にはちょっとした功名心も芽生えた。

早速木切れを拾ってきて、本に書いてあった錬成陣を思い浮かべながら「雪だるまを作る錬成陣」を描く。
そこに手をかざすと、淡い光とともに、雪がゆっくりと丸い形にまとまっていった。

「やったぞ!」

ロイは目を輝かせて、雪玉が大きくなるのを待った。
が、雪玉はロイの頭ほどの大きさになったあと、そこで成長を止めてしまった。

「こ、これだけ…?」

ロイの考えでは、両手で抱えられないくらいにはなるはずだったのだが。

「うーん…」

何がまずかったのだろう。考え込んでいると、

「マスタングさん、おはようございます。…今日は、お勉強の日でした?」

いつのまにか家を出てきたリザに声をかけられ、驚いたロイは雪の上に尻餅をついてしまった。
リザは黒っぽいコートの上に、青いチェックのブランケットを巻きつけていた。
白い息を吐きながら、不思議そうにロイを見つめている。






「い、いや、違うんだけど…えーと、ちょっと師匠に質問したいことがあってね」

まさか、雪だるまを作って驚かせるつもりだったが失敗したとは言えない。

「それ…錬金術で作ったんですか?」

リザはロイが雪の上に描いた錬成陣を覗き込む。
その金髪が雪からの反射光に照らされてきらきらと輝いているのが、少し眩しく感じられる。

「…ま、まあね…」
「すごいですね! もういちどやって見せてくださいませんか」
「え…いや、ちょっとそれは…」

時間のかかる割にちっぽけな雪玉しか作れないのを見られたら、リザに呆れられそうだ。
しかし、さっきちょっと思いついた陣の描き方なら少しは速く作れるかもしれない。

「じゃあ、ちょっとだけだよ」

ロイは再び木切れを手に取り、錬成陣を描き始めた。

「さっきはここのサインが正確でなかった、ここを整えてさらにこのサインを加えれば…」

ぶつぶつとつぶやきながらそれなりに複雑な陣を描くロイの姿を、リザはじっと見つめた。

「これで、どうかな」

ロイが手をかざすと、雪煙があがり、丸い玉が二つ出来上がった。残念ながら大きさは先ほどと変わらないが、ずっと速い時間で二つの雪玉を作れたことに満足して、ロイはそれを重ねてリザに向き直った。

「これ…雪だるまですね! すごい!!」

期待通りの反応だ。ロイは満足した。あとはこの錬成陣を師匠に見せて講評してもらおう。

「でも…」
「えっ?」

リザがにこにこしたままロイの袖を引いた。普段は見せないしぐさに、ロイは驚いた。

「雪だるまは、こうやって作るともっと大きくなりますよ」

そう言ってリザは足元の雪をすくって両手で握り締め、小さな雪玉を作った。そしてそれを器用に転がしていく。
たちまち雪玉は先ほどロイが錬金術で作り上げた雪玉と同じくらいの大きさになり、あっという間にそれより大きくなった。

「わあ、重くなってきた。マスタングさん、一緒に押してくださいー!」

リザが頬を上気させてロイの名を呼んだ。
美しい金髪と、澄んだ茶色の瞳が、楽しげにきらめいている。

「…よし!」

ロイはリザのところへ駆け寄り、後ろから覆いかぶさるようにして、一緒に大きくなった雪玉を押した。
たちまち雪玉はロイが両手で抱えるほどの大きさになった。

「もうひとつ!」

二人はさらにもうひとつ、大きな雪玉を作った。

「うわ、重いな。よっこらしょっと」

二つを重ねると、ロイの背丈ほどもある大きな雪だるまになった。

「顔を、作らなきゃな」
「私、石炭持ってきます!」

リザが家の中に駆け込んでいくのを、ロイは満面の笑顔で眺めた。素手で雪玉を押していたので、手がかじかんで痛い。
錬成陣を師匠にほめてもらうことなど、頭から消え失せていた。
いや、錬成陣のほうもとっくの前に大きな雪玉に巻き込まれてかき消されてしまったのだが。







石炭と木切れで雪だるまに顔を作り、はしゃぐ二人を、家の中からホークアイが見つめていた。

「なかなか、やるじゃないか」

師匠がそんな柔和な笑顔を見せることをロイが知るのは、ずっと後のことだ。









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Twitterで雪だるまネタが出たときに思いついてアイデアを伝えたら、ウケたので書いてみました。
かずきさん、いつもありがとうございます。

時期的には、ロイがホークアイ家に通い始めてからそれほど経ってない感じです。ようするに原作本編のエドと同じくらいの年頃なんですが、なんかロイのほうがお坊ちゃんというか世間知らずっぽいですね。ま、エドはあの時点ですでに4年も旅をしているわけで。
この年代の「男子」の背伸びぶりと裏腹の子供っぽさっていいよね、とか思っちゃう自分はもう立派なオバサンです。

(追記)
リザさんの瞳の色、青とか描いてたら茶色ですた…orz ご指摘いただきましたので謹んで訂正いたします。











2011.01.08 Sat l 二次創作 l コメント (0) l top

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