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   激しい雷鳴で目が覚めた。外は豪雨で、ひっきりなしに青みがかった稲光が部屋の壁を照らしている。
雷が怖いと思ったことはなかった。ただうるさくて、そのまま寝付くこともできそうになかった。

   ふと、父は帰ってきているのだろうかと思った。父、ゾルフ・J・キンブリーは国家錬金術師で、しばしば軍の「仕事」に出かける。「完璧に」「美しく」やり遂げることを信念にしている父の「仕事」の内容を詳しく聞いたことはなかったが、たいていは夕食の時間までに帰ってきていた。しかしその日は帰る気配がなく、わたしは結局先に寝たのだった。

リビングに人の気配がしたので、そちらへ行ってみた。

  父がいた。

  風呂に入った後らしく、真っ白いバスローブを羽織っていた。しかしその襟から覗く首筋は上気しているというよりはバスローブと同じような白さで、そこに普段は束ねている黒髪がかかっている。

  わたしはゆっくり近づいた。

  父は、考え事をしているというよりは放心したような様子で、足を投げ出し、腕もだらりと身体の脇に下ろしていた。虚ろな目で、唇がわずかに動いている。その唇にも血の気がない。わたしは急に不安になって、父の手に触れた。

  父の指は恐ろしく冷たく、石膏でできているかと思われた。 

「起きていたのですか」

  父の声がしてわたしは顔をあげた。父がこちらを見ていた。瞳孔がわずかに震えて、それが異様な光を宿しているように思えた。長い前髪が一房、こめかみから頬にかけて貼りつき、唇の端が切れて血が滲んでいた。わたしは手を引っ込めた。 

「これは失礼」

 父は目を閉じて、眉間を指先で押さえた。
 次に瞼を開けた時にはいつもの眼差しに戻っていた。  
 
「今日の『仕事』はいつもと勝手が違いましてね」 

父は唇の端の傷を長い舌で舐めた。

「雨が酷いですね。雷は嫌いですか?」 

   わたしは首を振った。  

「女性の前でこの格好は適切ではありませんね。着替えてきます。 牛乳を温めて飲みましょう」
 
  わたしは頷いてソファに腰掛けた。もう一度父の手に触った。
父の手は相変わらず冷たかった。けれどももはやそれは石ではないとわかっていた。
父はもう一度わたしを見て、それから立ち上がった。






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新年となりましたが妄想が切り替わるわけでもなくてキンブリーさんとその娘話シリーズです。
キンブリーさんは酒も煙草もやらない気がします。感覚を鈍らせるとか言いそう。
2012.01.01 Sun l 二次創作 l コメント (0) l top

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