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(はじめに)
これは、氷上和奇(ひかみかずき)様のサイト月砂漠にて2010年6月に開催されました「ロイアイの日(6月11日)企画」にて「テーマ:ロイアイ結婚式」でイラストとテキストの募集がされた際に投稿して掲載いただいたテキストです。

という経緯上、企画テーマに沿った内容になっています。
また、原作最終回を読む前に書いたものなので、今となっては設定にズレが生じている部分がありますが、経緯を尊重してそのままにしております。(実際は書き直すのが面倒くさい)

氷上様のオリジナル設定をかなり拝借して書いた事実上「三次創作」ですので、可能であれば氷上様オフラインテキスト「Wedding Bell」他をお読みの上読まれるとよいかもしれません。
(その割に登場人物の性格がかなり違っているような気がしますが)



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たった一日で、世界の見え方が変わることがある。
たった一日で、自分の生き方が変わることもある。

彼女の涙を、僕は忘れることはない。
幼年期の終わり、を僕に告げた涙。



1.
軽いため息をついて、少女はホームに降り立った。
「いたたたた…やっぱりおしりにくるわね、この座席」
腰の辺りを押さえつつ、しかし明るい表情で改札を抜けた彼女を迎える、金髪の少年が二人。
「ウィンリィ! お疲れさまー」
髪を短く切りそろえた背の高いほうの少年が、嬉しそうに彼女の大きなかばんを取り上げて運ぶ。
「ありがと、アル」
「うっわ。お前、やたら荷物多いな」
背の低いほうの少年が、自分ではその荷物を持たずに言う。
「しょうがないでしょ! 今回はいつもと違うもの。
結婚式に呼ばれたのよ! ドレスとか、シューズとか、バッグとか…メイクだって髪飾りだって要るのよ!」
「ドレス…? お前持ってたっけ? そんなのこっちで買えばいいじゃねーか」
「簡単に言わないでよ! エドが買ってくれるんならいいわよ。どうせ1着しか持ってないし」
「ばっ…! なんでオレがお前の買い物すんだよ!」

「ま、東のはずれのリゼンブールからここまで、長旅で疲れたでしょ。とりあえず家でお茶でも飲もうよ」
いつも通りのやりとりに苦笑しながら、大きな荷物を軽々と抱えた背の高いほうの少年、アルフォンス・エルリックが楽しげに言った。


アルフォンスと兄エドワードとが暮らす家に着いた後も、幼馴染である三人の会話は途切れることなく、いつの間にか日が暮れていた。
そこで近くの店で夕食を取り、家に戻る道すがら、アルフォンスはふと二人に声をかけた。
「僕、ちょっと寄っていきたいところがあるんだ。先に二人で行っててくれる?」
「おー。また猫かよ」
「アル、相変わらず猫の餌づけしてるの?」
「ま、ね」
アルフォンスはウィンリィにだけわかるようなかすかな目配せをして、角を曲がった。



─別に僕だって猫さえいればいいってわけじゃないんだけどね…



2.
いつもの場所に、猫はいなかった。
残念だが、仕方がない。この気まぐれさが、アルフォンスが猫を気に入っている理由のひとつでもある。
アルフォンスは猫にやるつもりだった魚の干物を自分でかじりながらぶらぶら歩き始めた。
このまま家に戻るのはまだ、早い。久しぶりに会う恋人同士に、二人だけの時間を用意するためにわざわざ寄り道しているのだ。

辺りはすっかり暗くなっていたが、そこは首都の中心部、道にはガス燈が灯り、人の流れも絶えることがない。アルフォンスは整備された川沿いの遊歩道へ入っていった。
彼は猫同様、夜の散歩が好きだった。

しばらく歩くうちに、遊歩道は男女の二人連ればかりであることに気がついた。繁華街の夜の遊歩道など、恋人たちのために用意されたようなものであるのに、久しぶりの散歩だったせいか忘れていたようだ。

ため息をついて、ベンチに腰を下ろす。

─どうしてこう、カップルに気を遣ってばかりいるんだろう、僕は。

明日は明日で、結婚式に出席することになっている。そう、ウィンリィがそのためにドレスを持ってきた結婚式だ。
ロイ・マスタング准将と、リザ・ホークアイ大尉の。

身体を取り戻してからも、リザの名を聞くたび、アルフォンスは彼女の涙のことを思い出してしまう。

あの時、無性に腹が立って、居ても立ってもいられない気持ちになったのを覚えている。
強く、賢く、優しい年上の女性が、上官の死を聞かされて脆く崩れ、膝をついて泣く姿。
見てはいけないものを見せられた……自分の無力ゆえに。

その怒りが、戦う決意となり、結果として兄とともに自分の身体を取り戻すことができたのだから、今となっては彼女の涙に感謝すべきなのかもしれない。

─でも。

リザにとっては、あの涙は何だったのだろうと、いつもそこで思考が止まる。


あれからしばらくして、兄から彼女と、その上官との因縁を聞き、二人が単なる上官と部下という間柄ではないと知った。リザの父はロイの錬金術の師匠だったという。きっと、秘伝である焔の錬金術とともに、娘を彼に託したのだろう。

明日には結婚する二人が、あのときにすでにそういう関係だったのかどうかはわからない。ただ、少なくともリザにとって、ロイがとても特別な存在だったことは、アルフォンスにも伝わってきた。

彼のいない世界に、生きることができなくなるほどに。

─そうだ。涙を流したあとの中尉は…死にたがってた。ラストもそう、言ってた。

リザについて、兄からはもうひとつ話を聞いていた。
親友ヒューズを殺したのが人造人間エンヴィーだと知ったロイが復讐のためにエンヴィーを焼き殺そうとしたとき、リザは彼に銃を突きつけて止めたのだと。そしてロイに「私を撃ち殺した後、君はどうする」と訊かれて、「私一人のうのうと生きていく気はありません」と答えたのだと。

そのときに彼女が涙を浮かべていたかどうか、そこまで兄に確かめることはできなかった。
でも、そんな気がする。

─中尉は、それでよかったの? ……今も、そう思っているの?
 あなたの生きる意味を、ひとりの男の存在にだけ、おいているの…?

「そんなの、嫌だな」

アルフォンスは思わず声を出した。
「あの時」とは、違う種類の、しかし怒りに似た感情が湧き上がってくるのを感じた。

結婚する。生涯をこの相手と共にすると、周りに告げる行為。
リザは、一生ずっと、そんな想いでロイのそばにいるつもりなのだろうか。


─それなら、僕が、中尉を連れ出す。


リザの涙。
彼女の、強さも、優しさも押し流して、死の彼岸へと追いやろうとする涙。


─もう、あの人が泣くところなんて、見たくないんだ。


深呼吸をして立ち上がり、辺りを見回すと、いつの間にか人通りもまばらだ。
結構な間、考え込んでしまっていたらしい。
エドワードとウィンリィに心配をかけてはいけないと、足早に家路を急いだ。


が、家についてみれば、リビングに二人の姿はなかった。
アルフォンスはため息をついて、自分の部屋へ引き上げた。



3.
「なあ、お前さ、大佐とか中尉とか言うんじゃねーぞ。軍部は、階級にはうるさいからな。」

着慣れないフォーマルスーツに身を包んだエドワードが、同じような姿でネクタイをしきりにいじっているアルフォンスに厳命した。
教会での結婚宣言の後、新郎新婦と親しい者だけが集まる小さな立食パーティーにエルリック兄弟も、そしてウィンリィも招かれ、久しぶりに会う人々と交流を深めることとなった。
「わかってるよ。准将と大尉、でしょ。でも、他の人たちもみんな階級が上がってるんだよねえ…?」
「大佐が出世したからな」
「兄さん、自分が間違ってるじゃん…」
「うっせーな。今のはちょっとした言葉のアヤっつうやつだ!」
大きな間違いはちゃんと認めるエドワードだが、小さな間違いについては子どものときと変わらず認めたがらない。
いつものことだとあきれた様子でウィンリィが話題を変えた。
「そういえばエド、スピーチ頼まれてるんでしょ?」
「まーな。ばっちり決めてやるぜ?」
やたらと胸を張ってジャケットの内ポケットに手を入れたエドワードの顔が青ざめた。

「……兄さん、原稿忘れたの?」
「……………な、なんとかする……………」

アルフォンスとウィンリィは顔を見合わせた。


やがて、身なりを再度整えた新郎新婦が再び現われ、シャンパンがふるまわれた。未成年のはずの三人にも、お構いなしにグラスが回ってきて、結局そのまま乾杯に参加することになってしまった。
めったに口にしないアルコールにふらつくアルフォンスの金の瞳に、新婦の横顔が映る。

いつもと少し違う、穏やかな微笑み。

眺めているうちに、昨夜の感情がますます強くなってくるのを感じて、しかしどうしていいかわからずアルフォンスはグラスを空けた。


司会が「お祝いのスピーチをここで」と告げた。
盟友であったマース・ヒューズがいない今、ロイにとってリザ以外に上下関係ではないつながりを持っている人間といえば、エルリック兄弟ぐらいだった。エドワードにしても、日ごろ会えば憎まれ口を叩き合っているロイに、素直な感謝と祝福を述べる数少ない機会なのだから、「お祝いなんだから変なこと言っちゃだめなんだよ」というアルフォンスの言葉を聞きながら何やら書き付けていたスピーチの原稿は、それなりにまともなものだったはずだ。

しかし、その原稿をエドワードは忘れてきてしまった。

……悪い予感がした。

「えーと。本日はおめでたい席にご招待いただきありがとうございます。たい…准将と大尉にはじめて会ったのはもうずいぶん前のことになりますが、オレが国家錬金術師の資格を取ったときや、アルフォンスと旅に出ていたときも、お二人にはいろいろ助けていただいて、本当に感謝しています。………
えーと………、大佐が女好きというのはほんとに軍部でも有名で実際オレが東方司令部に行くたびに大佐は違う女に私用電話してて、中尉が超こえー顔で見てたのを覚えています。だもんでいつも、何で中尉はこんな女たらしで怠け者な大佐とずーっと一緒に仕事してんだろうなと思ってましたが、まあいざというときは意外と頼りになるし、中尉は犬のしつけにも超きびしーんでこれからは大佐のこともしつけてくれてもっとまじめに仕事するように……うわあぢいっ!!」

エドワードのアンテナのように逆立った前髪の一房が、ちりちりと音を立てて燃えていた。
こんなことをするのは一人しかいない。

「大佐てめえ! 人がしゃべってんのに何すんだよ! あちーじゃねえか!」
「それがパーティーの席上でする話か。それに私は今大佐ではないぞ」
「こまけーこたぁいいんだよ! だいたいなんで普通の手袋じゃなくて発火布してんだよ!」
「君のような不謹慎な者を注意するためだ」
「何だとぉ!? オレはホントのことを…」


その場にいた全員が、「あーあ」という顔になった。「やっぱり大将だな」とハボックがにやにやしながら煙草に火をつける。
「もう、エドったら…!!」
ウィンリィがテーブルの花瓶の水をエドワードにぶちまけた。頭を冷やせというのだろうが、当然、逆効果であり、怒号は大きくなった。

「…准将。こちらの手袋にはめかえてください。ご冗談が過ぎます」

純白のドレスを着たリザが、氷のような冷たい声でマスタングに白手袋を差し出した。さすがに今日は拳銃というわけには行かなかったらしい。
「む…」
三人はとたんにしゅんとしてしまった。向こうで、マスタング組の面子が笑いをこらえているのが見える。
「エドワード君、お手洗いに鏡があるわ。ウィンリィちゃん、一緒に見てあげてくれる?」
リザは二人ににっこりと笑いかけた。ロイは、リザに目を合わせないようにしながら、おとなしく発火布の手袋をはずし、白手袋をはめている。
「准将。…エリシアちゃんに、花束のお礼を言ってあげてはいかがですか?」
「う、うむ。そうだな」
頭をかきながらヒューズの愛娘エリシアのところへ向かうロイを見届けて、くるりと振り向いたリザと、アルフォンスの目が合った。
「あら、アルフォンス君」


「…さっきはごめんなさいね。エドワード君のスピーチ、台無しにしてしまって」
リザがこちらへ歩いてきた。眩暈と、喉の渇きを同時に覚えて、アルフォンスはまたテーブルにあったシャンパンを飲み干してしまった。

「…い、いや、あのまま話してたら僕が止めてました。すみません…兄さん、ちゃんとしたスピーチ考えてたみたいなんですけど、その原稿、忘れちゃったんです」
「そうだったの」
リザは、エドワードとウィンリィに向けたのと同じような、暖かな笑みをたたえながらアルフォンスを見ている。

「………あの」

アルフォンスは急にリザの手を引いた。

「僕は今日、中尉…リザさんに訊きたいことがあるんです」



4.
そのまま、アルフォンスはバルコニーまでリザの手を引いてきた。そしてリザが顔をしかめたのに気がついて、やっと手を離した。

「す、すいません」
「いいのよ……でも、どうしたの、アルフォンス君」

「……アルでいいです」

リザは、アルフォンスの口調がいつもと違うのに気がついたようだ。

「……酔ってるのかしら?」
「酔ってません。……いや、酔ってるかもしれないけど、でも、僕の質問に答えてもらえますか」
「いいけど…」
「リザさんは、どうして大佐と結婚するんですか」
「え?」
「大佐が、いなくなったら……どうするんですか」
「…………」

リザの様子にはおかまいなしに、アルフォンスは続けた。
紅潮した頬。

「リザさんが大佐のことを大事に思ってるのは知ってます。でも…、自分のことより大事に思うなんて…、僕はそんなの、嫌なんだ」

揺れながらも、大きく見開かれた金の瞳。真実を知ろうとするとき、この兄弟は驚くほど似た目つきになる。リザはなぜかそんなことを思った。


アルフォンスが握り締めて皺の寄った長手袋を整えながら、静かに答える。

「……そうね。初恋の人だから、かしら」
「………」

「礼儀正しくて、真面目で、優しくて、笑顔の素敵な、かっこいいお兄さん、だったのよ、あのころの私にとっては。…父も、あの人の才能をいつもほめていたわ。基本しか教えなくても、自分でどんどん考えを深めて高めていけるって」

それが錬金術師にとって不可欠な能力であることは、自身も錬金術師であるアルフォンスなら理解できるだろう。

「でも、あの人は最初からずっと、この国をもっといい国にすることを考えていて……父からしたら、一生をかけて探求する価値のある錬金術という学問があるのに、そしてそれを追求できる才能があるのに、そうするつもりのないあの人が、苛立たしかったでしょうね」

くす、と笑う。

「父と、あの人は、ちょっと似ているところがあるのよ。自分の周りにいる人は、自分が信じていることと同じことを信じてくれると、思ってるの。まっすぐすぎるのね。そうでないとあんな複雑な学問には没頭できないのかもしれないけど…」

アルフォンスはうなづいた。同じようなタイプの人間をよく知っていた。
だが、リザの次の言葉には、息を呑んだ。

「そういう人だから、自分の秘伝を娘の身体に託すなんてことするのよ。秘伝にふさわしい者は、娘にもふさわしい、だなんて。ひどいでしょう?」

「…………」

「父が死んだとき、─言い方は悪いけれど─、私、嬉しかったかもしれない。自分の未来を、自分で決められるのだもの。もちろん、秘伝を伝える責任を父から受け継いでいたけれど、伝えるべき相手に迷う必要はなかった。…いつ、伝えるのかを決めなくてはいけなかったのだけど」

父はロイのことを『まだまだ若造だ』と言っていた。だがその意味を知るには、自分も若すぎた。

「あの人が未来を語る言葉が……とても素敵に思えたのよ」

そして、自分の身体と一体化している父の秘伝を、ロイに与えた。

好きだったから。
信じていたから。

私も国をよくするために生きよう。あの人を支えていこう、と、自分も士官学校に入った。軍隊という組織の本質がどこにあるかを、深く考えることもなく。
イシュヴァールで、狙撃銃のスコープを覗き、引き金を引いたあのときまで。

─そして、彼に再会したのだった。


「あの人はあの人で、師匠の秘伝を手にすることで、その娘の人生も自分が背負うことになるのだということを、きちんとわかってなかったのよ。……ほんとに父と似てるわね。
私…、父から託された秘伝を、あの人に、焼いてもらったの。
やつあたりね……そんなことをしても何も変わらないのに……いいえ、束縛……」

彼が、父の墓の前で語った理想の道から外れることを、許さない。そして私も、そんな彼を支えるという自分の役割から、決して外れない。命を捨てても彼を守る…そして守るべき人がいなくなった時には、自らその命を捨てる。
その戒めで自分と、ロイとを、きつくきつく縛ってきた。


「大丈夫よ」

再び自分の手をつかもうとしたアルフォンスを、リザは止めた。

「あの人、ずっと悩んでいたの。私が、自分の命なんかどうでもいいと、思っていたことを。アル君に助けられたときも。エンヴィーを、殺そうとしたときも。何度も言われたわ。『死ぬな』『生き延びろ』『これは命令だ』と…。
それなのに私、自分が死にそうになって、あの人もあんなことになって…、やっと気がついたのよ。どんな形でも……たとえ目が見えなくなったとしても…、生きていかなきゃいけないんだって、そうでなければ罪を償うことはできないんだって。


……だからアル君、安心して。私もう、…死ぬために生きてはいないわ。

もちろんこれからも彼を守っていくつもりだけど…、それは、エドワード君がウィンリィちゃんを守るのと同じね」

リザはすこしの間躊躇して、それから顔を赤らめてアルフォンスに告げた。

「私、あの人のことが……大好きなのよ」



5.
「ちょっと疲れてるんじゃない? もう一晩、泊まっていけばいいのに」
「ううん、いいのよ。待たせているお客さんがいるから。ちょっと片付けなきゃいけないこともあるし」
よっこらしょ、と言いながらウィンリィが大きな荷物と一緒に客車に乗った。
「じゃーな」
いつもにも増してそっけない態度のエドワードが、くるりと背を向けて手を振る。
「兄さん、また…」
「アル」
ウィンリィが小さな声でアルフォンスに告げた。
「近いうちに私……セントラルで暮らすと思う」
「えっ」
あっけに取られたアルフォンスを置きざりに、ウィンリィを乗せた列車は発車してしまった。

「ちょっ……兄さん!」
すたすたと駅を出て歩いているエドワードをアルフォンスはあわてて追いかけた。
「ウィンリィ、セントラルに来るって、それって、…」
いつものようにポケットに両手を突っ込んだまま振り向いて、エドワードはアルフォンスを軽くにらみつけた。
「お前、今日、酔ってただろ。未成年のくせに」
「そ、それは…」
「…中尉も、大佐のヤローも、いい顔してたよな」

広い交差点を横断しながら、エドワードはニッと笑った。

「あの日……お父様ってヤツをぶっ飛ばそうとしてたとき、大佐と中尉も一緒に戦ってくれただろ。あの時大佐は目をやられてたからさ、中尉が大佐の目になってたんだけど、なんか…、お互い、絶対離さない、一緒に生きてく、って感じだった、すごく。…まあオレも必死だったから、あんまし覚えちゃいねえけどな」

「……そうだったんだ?」

「お? おー。そっか、お前んとこからは見えなかったかもな」

「そのとき……、リザさん、泣いてた?」

「はぁ? 泣くわけねーだろ。戦ってんだぞ、大佐と一緒に」

道路の反対側にたどり着いたところで、アルフォンスはため息をついた。

「僕さ…、失恋しちゃったよ」
「え、ええ!? 誰にだよ、まさか」
「…兄さん、やっぱりウィンリィにそばにいてほしいんでしょ。いったいいつそんな話したのかねぇ~」
「てめ、何ニヤついてんだよ。今はぐらかしただろ。おい!」


─あの人はもう、あんな涙を流すことはないんだ。









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(あとがき)
非常に長いまえがき(というか言い訳)にもかかわらずお読みくださりありがとうございます。
「ロイアイの日企画」の投稿作品なのにロイとリザがほとんど会話していません…実際多くの投稿作品(イラスト含め)の中で浮きまくっていました。
このような文章にもかかわらず快く掲載してくださった氷上様にはひたすら感謝申し上げるばかりです。

ところで、鎧アルの一人称は「ボク」なのですが、この文章では10代も後半になって「ボク」はないよね、と「僕」にしたところ、最終回の成長したアルが「僕」と言っていてちょっと「我が意を得たり」みたいな。プチ自慢すみません。


2010.06.19 Sat l 二次創作 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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