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 リザから受け取った電話でしばらく話した挙句、ガチャリと受話器を置いてロイは頭を抱えた。

「何で私が……!」
「どうされました」
「天気予報を頼まれた! これから三日肩代わりしろだと!」

 ロイの悲壮な表情とは対照的な、淡々とした口調でリザが応えた。

「しかしデータは担当部署から来ますし、大佐は広報だけでしょう」
「だから! 私の名前が出ることが問題なんだ!」

 ロイが叫んだところで、執務室のいつものメンバーが加わった。

「確かに、大佐の名前で出た予報が外れたらかっこ悪いすね。ハハ」
「ハボック、笑うな!」
「現在担当されてる方の予報は大変精度高いですよ」
「む……」

 ファルマンの言葉が火に油を注いでしまったようだ。



 それから二日間、マスタング組は気象担当からのデータをさらに精査させられることになった。ただでさえ忙しいところに余計な仕事が増えた部下たちからは当然ながら非難轟々だ。

「ったく、俺らにわかるわけねえよな」
「聞こえてるぞブレダ」



 普段の担当官の部下たちが優秀なのか、あるいはマスタング組の悲鳴が天に届いたか、予報は順調に当たった。

 そしてやっと、最終日がきた。


 
 最初は聴衆のいないスタジオの中でマイクに向かって話すということに戸惑ったロイだが、ラジオ放送での話し方のコツも身についた気がしている。普段なら眠気に負けそうになる早朝だが、朗々たる声でスピーカーの向こうにいるはずの市民に話しかける。

「みなさんおはようございます。東方司令部、気象予報官代理ロイ・マスタングです。本日の東部の天気についてお知らせいたします。本日、東部地方は曇りのち一時雨。繰り返します。東部地方は本日曇りのち一時雨の予報となっています。どうぞみなさん、お洗濯など十分ご留意ください……」

 思わず余計なことまで付け足して、意気揚々と放送局から戻ったロイに、フュリーが真っ青な顔で告げた。

「大佐……データが間違ってました。今日は一日曇りです。雨は降りません!」
「な、何だと?!」

 執務室は騒然となった。



「今から戻って、訂正放送を流しましょう」
「イヤだ」
「ええーっ?!」

 ロイはリザに厳かに命じた。

「中尉、施設管理部と交渉して、午前中のうちに30分間練兵場を借りてきてくれ。今日は特に練兵場での演習予定はないはずだ」
「……了解しました」

 リザがこめかみをぴくぴくさせながら出て行った。

 ロイのほうも、「15分で戻る」と言い捨てて図書室に籠ったかと思うと、手に何やらメモを数枚持って戻り、部下たちに突き出した。

「いいかハボック、この錬成陣を白線で描き出すんだ。フュリー、撮影記録部に仲のいい技師がいただろう。これを分けてもらってこい」



 一時間後、巨大な錬成陣が練兵場に出来上がった。施設管理部の担当官と思しき人物が飛んできたが、ブレダが何やら話し込んで止めた。

「よし。若干歪んでいるがまあ問題ないだろう。フュリー、そいつをここへ置け」

 マスクと手袋をしたフュリーが、用意した薬品を紙袋からぶちまけた。黄色っぽいその粉は、見る間に黒っぽく変わっていく。

「うむ。皆、下がっていろ」

 ロイは錬成陣を発動させた。青白い錬成光が走ったかと思うと猛烈な上昇気流が巻き起こり、白っぽい煙が上空に昇っていった。
 やがて、のっぺりと薄雲がかかっていた空に、明らかにそれとは違うもくもくとした黒雲が現れたかと思うと、いきなり激しい雨が振り出した。

 濡れるのも構わず、ロイが高笑いする声が聴こえる。

「あはははは!! 私の天気予報は絶対当たるのだ~!」



「大佐。イーストシティ西部地域管轄の部隊から応援要請が来ています」

 ロイが天気予報を無理やり的中させた翌日、リザが氷のような声でロイに書類を渡した。

「応援要請って……殺人犯でも出たのか」
「いいえ。用水路が昨日の大雨で決壊してそちらの復旧に人員を取られているため、警護要員を回してほしいとのことです」
「大雨……」
「それから。撮影記録部から、ヨウ化銀の購入費用について特別稟議が来ています」

 リザはロイの反応を無視して淡々と告げた。

「むむむ……。仕方ないな。ハボック。西部の応援に行く人員のピックアップを頼む」
「大佐ぁ。ハボックは昨日びしょ濡れで練兵場の後始末やったんで熱出して宿舎で寝てますぜ」

 ブレダが振り向きもせずに言った。ロイは頭を垂れた。



 あちこちに謝り倒して業務にけりがついた頃には、もう深夜になろうとしていた。ハボックが心配だというブレダをはじめ、部下たちを先に帰らせた執務室には、ロイとリザしかいない。

 最後の書類にサインをして、ロイは独り言のようにつぶやいた。

「中尉……昨日……と今日はすまなかった」
「私におっしゃってどうするんです。きちんと皆をねぎらってください」

 ふと窓の外に目をやると、静かに雨が降っている。

「もともと今日降るはずだったんだな」
「そうですね」
「……そろそろ帰るか」
「はい」

 リザが書類をまとめ、立ち上がった。

 雨の音が部屋の隅々に広がった。





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「イタリアでは空軍大佐が天気予報を発表する」(気象局が空軍の管轄だから)というお話をTwitterで伺ってそこから妄想してフォロワーさんに垂れ流したお話。今回再録するにあたってかなり加筆しておりますが、要するにわりとお約束の軍部ドタバタ話であります。
イーストシティ全体に雨を降らせるのには実際はどの程度のヨウ化銀が必要なんですかね……

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2011.09.03 Sat l 二次創作 l コメント (0) l top
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